紅一点
 
もし、私がここへ来たせいで
ここが脅かされると言うのなら、
私に出来ることって何だろう?

私は、ずっとアイツらから
逃げて生きて行くのだろうか?

「私、アイツらに、リベンジしたい。
半グレって、資金源を断てば、
悪さは出来なくなるものなの?」

ずっと抱いていた気持ちを
無意識に吐露していた。

その言葉に反応したのは
池田屋の姐さんだ。

「ハオ、悪い奴は、
どんな事をしても
悪さに手を染める。

私は、貧困と教育力は
遺伝するって思っているわ。
所謂、思想ってヤツね。

そこに産まれ落ちたから
仕方ないだなんて
環境に抗わない人間は
簡単に惰性に染まる。

ここは、向こうの世界とは
治外法権なんだし、
あなたの慰謝料として、奴らから
流動資産全てを頂戴するのは、
アリなんじゃないかしら?

そのゲス共は、池田屋(うち)
同類業種なのでしょう?
それならば、業界としても
制裁は必要よね。」

そう言って、うっとりするほど、
悪そうな笑みを浮かべる
姐さんにゾクリとした。

「あら、池田屋、
雅也も来てたの?」

居住空間と店の間の扉が開いて、
淳之介が戻ってくる。

その淳之介の顔をみて
池田屋の姐さんは、
ウフフと笑む。

「ハオ、あなたの希望を
叶えられる仕事があるわよ。
仲介料、これでよければ
紹介してあげるけど。
どうする?」

タブレットを胸元に掲げる
姐さんに、私は是非にと
力強く頷き、弁護士は、
額を掌で覆い呻き声をあげた。


 
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