紅一点
 

淳之介が開けたカフェの
倉庫の扉の向こう側、
更に壁面の隠し扉を
開けたソコにあったのは

…事務所…?

淳之介が声をかける。

「毛利、いる?」
「社長、お疲れ様で…」

扉をくぐる雅也と淳之介を
押しのけて、池田屋の姐さんが、
小走りに事務所奥の
偉いさん席に向い駆けて行き、
でっかい事務机を踏み切り、
その奥に座るオトコマエの首に
抱きついた。

「チャオ!ダーリン!!」

「…あら、池田屋ったら♪」
淳之介がウフフと笑う。

「あれ、池田屋のいい人よ♪
いいオトコでしょ。」

そう言って。

「あ、そうなんだ。」

確かにイイオトコですけどぉ…

姐さん…顔面、掌で
推し戻されてますよ。

首が、おかしな方向に
曲がっていて
痛そうですよ?(笑)

もう、正直、
オトコマエは見慣れた。

黙っていれば、チョイ悪男
ワイルド系男子の淳之介、
ハリウッド俳優さながらの
ハーフ顔弁護士の雅也、
遠近感が狂う小顔和風男子
リサイクル業者の重蔵も、
外見偏差値だけは、
すこぶるハイスペックだ。

まぁ…蓋をあければ、
ビジネスおねぇと、
毒舌弁護士と、性格破綻の
ブローカー優男…なんだけど。

「さて、淳之介に隠れている
キミはお客様?」

首にしがみつく姐さんに
ものともせず、皆がボスと
称したお兄さんは、
こちらに視線を向ける。

「ダーリン、紹介するわ。
彼女はハオ。お金のにおいの
する女の子よ♪」

すかさず、池田屋さんが
紹介してくれたけれど。

…姐さん…説明が雑です。

雑すぎて、ボスな社長さんが
眉間に皺を拵えてます。


 
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