紅一点
 

社長さんは、姐さんの
ボキャブラリーには
ハナから期待を寄せて
いないのだろう。

「雅也、説明して。」

弁護士に説明を促し、
アタマがよいであろう野郎は、
要点をまとめて社長さんに
伝えた。

「なるほど…
リベンジの依頼で
依頼料は取れ高の歩合制で、
取れ高が満たない場合は、
肉体労働で補うという事か。
彼女は、うちの仕事に、
耐えうるのだろうか?」

社長さんは、私を
マジマジと見つめる。

…何をさせる
つもりだろうか?

まぁ…犯罪以外なら、
なんでもやれると思うけど
私、結構器用なほうだから。

「ダーリン、ちゃんと
雇用契約は結んで
くれなくちゃ嫌だわ。

あと、紹介料も弾んで
くれなくちゃ。
ハオは逸材よ。
本当は、うちで契約したい
くらいなのよ?」

姐さんが、ぷるんとした
唇に、指を添えて言う。

「池田屋がそういうなら、
契約に値するのだろうね。」

そういって、二人は
紹介料の交渉を始める。

「ねぇ、淳之介。
ここは、どこなの?
私は何をするの?」

そんな思いをこめて、
淳之介の袖を、ツンツン
指で引けば

「ここはねぇ…あれよ。
ほら、…探偵事務所
みたいな…?」

そう、宣う。

「…迷い猫探しとか
不倫調査でもするの…?」

そう呟けば

「あら、いやだ。
ハオったら発想が陳腐よ。
アンタが持ってきた
端末でやってる
芝居の見過ぎじゃないの?」

そういって、
淳之介が私の額を
小突いて、フフフと笑った。

 
 
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