紅一点
 

「淳之介、いってくるね。」

朝御飯の後、食器を
洗い終えたハオが
着物をはおりながら
玄関へ向かう。

帯は苦手らしくて
最近では着物の上から
革製のベルトを
腰に巻いて着ている。

「淳之介、今日は私、
夕食を終えたら、
訓練しにいくね。」

ハオは、最近
7日おきに、夜間、
趣味のパルクールとやらの
練習に外出する。

有事に備え、筋力の低下を
少しでも軽減するため、
…って、本人はいうけど。
何だか、壁を感じてしまい
ため息が出てしまう。

事前に俺に
知らせるのは…
どんな理由がある?

活発で社交的な子だけに
早々に何処かで(イイヒト)
相引きでもするのだろうか?

年頃の女の子に
どこまで干渉していいのか
測りかねてしまって、つい…

「いってらっしゃい。
じゃあ…私も、今夜はちょっと
夜遊びしちゃおうかしら。」

なんて、台詞で送り出して
しまったけれど…

思わず常連客だけの
カウンター席に
油断から、溜息を零す。

「どうした?淳之介。」

重蔵が、羽二重もちを
飲み込んで俺に問う。

…食べながら喋ったら
殴ってやろうと
思ってたんだけど。

「いや…ハオがね。
定期的に夜間出かけるの。
(イイヒト)でもいるのかって…
ちょっと思って。」
 

思わず思いを吐露すれば。
  

 
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