紅一点
 
 
薄暗い行灯と、お三味の音、
階下で宴会の音がする。

あら…この行灯
…油の匂いがしない??

どういう事…?

「あら、旦那、お気付き?」

お酌をしながら、太夫が
フフフと笑う。

「この行灯、LED照明って
いうらしいの。油の匂いが
好きじゃないって言ったら
ハオが、修繕の男衆を
連れて来てくれたのよ。」

電源をこんなところに
引くなんて、驚きよね。
そう太夫言って。

「コレで安心して、
乱れられるわね。
…さて、どうなさる?」

…なんて、俺の反応を
伺ってくるけど。

…同意なんてできねぇ。

ハオが仲良くしてる太夫に
欲求解消の世話をさせる様な
根性は、俺にはない…

「…金は払うから
眠くなるまで、話でも
つきあってよ。」

「フフフ。いいわよ。
いいお父さんやってるのね。
毎度アリ♪」

太夫は追加のお酒を
頼んで、ヒトの悪い表情で
俺を見てくる。

「…なにヨォ?」

もう、居心地が悪いったら。

「初めての家族はどう?」

俺達の生い立ちも既知の
太夫が、手酌でお猪口を
真っ赤な紅を引いた口元へ運ぶ。

格子戸ごしの夜空に
浮かぶ月を眺めながら
ハオがいる世界を噛み締める。

「うん。すごくいいよ。
ヒヤヒヤしたりするけど、
守ってあげなくちゃって
毎日寝顔見る度思う。」

「あら、一緒に寝てるの?」

ウフフと悪い笑顔で
聞かないでよ。

「バカ言わないで。
ちゃんと、別々よ。」

ちゃんと嫁入り前の
女の子だってわきまえてる。

…いつかハオも
お嫁に行くのかしら…


 
 
< 42 / 95 >

この作品をシェア

pagetop