紅一点
 

「旦那?どうしたの?」

太夫が小首を傾げる。

「ん?ハオもお嫁に
行ったりするのかって
思っただけ。」

…そしたら、また
1人に戻るだけだってのに
なんだか寂しい。

「フフフ。旦那、
ハオの事好きなの?
だったらこんな所に来ないで
捕まえておかなくちゃ
逃げられるわよ。」

“どうせ指咥えて
見てるだけなんでしょ?
遊郭なんか来てる場合じゃ
ないでしょう”って
太夫は苦笑する。

「こんな所…だなんて、
自分を卑下する様な
言い方すんじゃないわよ。」

太夫と隣り合って
壁にもたれて座り
手酌も面倒になって
お銚子のまま、酒を飲む。

「卑下なんてしないわよ。
哀れなオトコ達の相手を
してやってんのよ。
極上の夢を見られんだから
有り難く思いなさいな。」

今日の太夫は、ご機嫌だ。

「ハオの事は、私も好き。
あの子の等身大で生きる姿は
見ていてすごくチカラになる。」

「そうなの?」

「そうよ。旦那、あのね。
余計なお世話かと思うけど…」

太夫がポツリと
身の上話を始めた。
珍しい事もあるものだ。


 
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