紅一点
5章 side ハオ
 
今やすっかり、
閉じてしまったが、
井戸への通路があった所へ
訪れた。

あの井戸が塞がれた事と
こちらの世界へつながる通路が
閉ざされた事は、リンクしている
らしい。

そうとはいえ、もしかして…
開いたかと思ったりしたけど…
もはや、横穴の形跡なんて
みつけることすらできない。

別に、ムコウに
未練なんてないけれど。

…私を風俗に売り飛ばした
半グレのどもには
報復したいのだ。

…しかしまぁ…
色んな事を知った今では…

斡旋先が、温〜い
キャバクラだったから
水に流してやってもいいかと
いう気持ちと、給金から
謎の手数料という名の金を、
ピンハネされ続けた
落とし前はつけるべきと
いう気持ちで揺れている。

「あら、埃だらけだ。」

今晩は、淳之介は
帰ってこない。

洗濯機を回しながら
お風呂でゆっくり過ごし
脱水の終了と共に
風呂から上がり
洗濯モノを干した。

いつもは、淳之介と
リビングでテレビを
見ている時間。

「あれ…誰かいる?」

誰もいないはずの
リビングの襖の隙間から
うっすら漏れる光と音が
漏れてくる。

不法侵入者を確かめるべく
気配を消し進み、
そおーっと襖を開けた。

そして、真っ暗な室内にいる
人様のノートパソコンで
私が借りパクしたディスクを
無心に鑑賞している男の
背後に無言で立った。

 
 
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