紅一点
その後、重蔵と二人
調子に乗って、ホラー映画を
立て続けに見た。
二人で、ギャーギャー騒いで、
一人でトイレに行けない
重蔵に、扉の前まで
ひきずられていったり…
小さい頃から、一人で
遊ぶことが多かった
私には、ちょっと新しい
経験だった。
妙に、満足した気持ちで
二人コタツに入ったまま
寝落ちしてしまい
そのまま迎えた朝はーーーーー
「いっやあああああ!!
どういうことだ!?ぁあっ?!」
いつの間にか
抱き合う状態になって
眠っていた私達を
閉め忘れた雨戸の隙間から
差し込む朝日が、うっすら
浮き彫りにしていて。
文字通り、それを
涙目で見つめる
淳之介のドスの効いた
いい声の絶叫で
幕を開けた。
「ああ…寒かったから
知らない間に、こんな風に
なってたみたいだな。」
淳之介の絶叫に叩き起こされ、
寝ぼけたままの重蔵が
欠伸をしながら、状況を
説明したけれど、
淳之介のショックは
収まらなくて。
「大体、俺がコイツなんぞに
欲情するとでも思ってんの?」
重蔵が更に宥めにかかるけど。
言い方が雑いのだよ。
欲情は、別の問題として…
「失礼だな。ヒトの乳の谷間
ガン見したくせに。」
「なんだと!?」
淳之介がブチ切れ
重蔵の頭を叩き
「語弊のある言い方すんな!
アバズレ!」
重蔵が私のおでこに
強烈なデコピンをみまい…
探偵事務所に来た雅也が
喧騒に驚き様子を覗きに
くるまで、くだらない
口論は、続いたのだった。