紅一点
 

仲裁に入った雅也が、
ことの顛末を聞いて
漏らした一言は

「クッソどーでもいい。」

…だった。
仰る通りです。

でも、淳之介は
違ったらしい。

「…アタシ、もう二度と
遊郭には行かない。
ハオを1人にしない。」

そう言って、涙をにじませ
唇をかみしめている。

「淳之介。くちびる
切れちゃうから
噛んじゃ駄目だよ。」

そう言って、頬に両手を
伸ばして、睫毛が辛うじて
その双眼に留めている
涙を指先で拭う。

「じゃあ、こんな事
二度としないで。
アタシも、二度と遊郭には
遊びに行かないから。」

掠れた声で言って
私の手の甲を自分の
大きな掌で覆った淳之介は
思いの外強い眼差しを
していた。


 

 
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