紅一点
そんな騒動の後、暫くして
淳之介から池田屋へ
甘味の配達を頼まれた。
…あの夜
淳之介のお相手だった
太夫の注文だ。
多分、ゆっくり話すための
口実だと思う。
「あら、あのあと
そんな事があったの。」
桜色のジャージを着て
片膝を立ててキセル吹かし、
帰宅後の淳之介の様子を
聞いて、太夫はクスクス笑う。
「まぁ、夜通し飲み相手に
なってくれるんだったら
今後も大歓迎だけど。
最近の客人は、侘び寂びが
分かってなくてダメよね。
がっつくんなら、そういう店
選ばないとダメよねぇ?
そういう意味では、
旦那いいお客よ。
さすが、うちの姐さん達が
お育てになっただけはある。」
太夫は、そう言って
頷いているけど
…遊郭の遊び方を知ってる
子供って、割と微妙だと
思うんですけど…
私と太夫が
初めて会ったのは
ここに来てすぐの事だ。
淳之介から、甘味の配達を
承ったのがキッカケだった。
ーーーーあの日
「ところで、ハオ。
あっちは、今、
西暦何年なの?」
太夫は、そう言って
ニッコリ笑った。