紅一点
「うるさい。黙れ。」
彼は、こちらに視線すら
向けずにに被せ気味で
発言を封じた。
AI太夫と私の視線が絡む。
「なんか、もったいないよねぇ。
こんなによく出来てるのに
同じ空間に居ないだけで
なんだかちょっと
映像かぁ…って冷静になるよね。」
彼女は私の言葉を拾い
考えている様子を見せる。
『それは…同じ空間にいれば
それだけで骨抜きになる
殿方は多いって、意味ですか?』
その言葉に、全員が
電脳空間に漂う彼女に
視線を送った。
しかも…
「「「…かしこい…」」」
みんなのセリフが被るなんて。
そして、そんな可哀想な子を
見る目で、私を見てくれるな。
「あのぉ…辛辣なんですけど。」
頭一つ分上に並ぶ顔ぶれに
唇を尖らせてみせれば。
『ハオさん、…ありますよ。
コチラの空間と皆様のいる
空間が、重なるところが。』
カノジョがニッコリ微笑い、
雅也がウンウン頷き同意する。
「なるほど、そこへ誘い込めば
ヤツらはさらに、コイツを
現実の女郎だと思い込むな。」
「弁護士。テメー失礼だな。
うちのニューフェイスを
コイツ呼ばわりすんな。
…ってか、名前決まった?
呼びにくいよ。」
太夫の方へ視線を送る。
「そうねぇー。これだけ
賢ければ、自分で名前を
決めそうだけど…
名前は、子が誕生して
最初のプレゼントだって
言うものね。
ハオ、アンタ何か案はある?」
悩む太夫が、私に意見を求める。
「…私は、イイオンナの呼称は
『不〜二子ちゃん』一択ですよ。
太夫。」
そう答えれば。
「…ハオ、そのオンナは
強かがすぎるわ。
そこまで逞しく
育たなくっていいのよ。
…でもそうね。不二子嬢に
ちなんで、藤姫に
しましょうか。」
藤姫は承知したと答え
何かをアップデート
し始めた。
不二子嬢ほど
強かではないにしろ、
可愛くて賢い女の子に
なっておくれよ。