紅一点
 

『藤姫…』

AI太夫改め、藤姫が
呟いた。

「藤姫、気に入ったの?」

淳之介が尋ねれば
コクコクと頷き肯定する。

「そう。よかったわね。
…アタシ達の名前も、こうやって
決めてくれたのかしらね。」

淳之介が感慨深げに
零せば。

「オレ達は、もっと雑だよ。」

物知り顔で雅也が言った。

「小さい頃に聞いた事がある。
オマエは古い官能小説の表紙から、
俺はいつの時代かわからん
芸能雑誌が由緒だ。」

「…ショックだわ。
じゃあ、重蔵は?」

「アイツは、再放送していた
映画のエンディングロールから
採用されたらしい。

…まぁ、なんだ。俺達は
そんなもんだよ。」

…子供の初めての
プレゼントが…こんな雑で
いいのかしら…

ちょっと納得がいかない
気分になった。

 
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