紅一点
 

「おじゃましまーす。」

“ええ、どうぞ。おあがりやす。”

藤姫がどこで仕入れたいか
よくわからないお出迎えを
してくれる。

ここは、藤姫の住む世界。

彼女曰く、ここは、
鏡に反射した月の光が伸びた
先にある世界。
何やら月の光と秘密の熱量が
織りなす太古からある
呪術世界で、神隠し的な
迷い人が来る世界らしい。

…それ、やばくない?

「でもさぁ、私の手鏡で
月光を反射させても
何処にも繋がらなかったよ。
私がこっちに来た時の
穴も突然無くなったしさ。
イマイチ仕組みが不明よね。」

ポケットの中から
出した手鏡をシゲシゲと
ながめてしまう。

「ああ、それなら
簡単な事ですよ。ハオ様。」

湯呑みを卓上に置きながら
藤姫がフフフと笑う。

「鏡に秘密があるのです。
鏡は古代の祭具を指します。
言わば、古墳の副葬品に
ある様なものです。」

「へぇー。全部そうなの?
みんなそれを持ってるの?」

「私が収集したデータによると
それがこの世界につながる
鍵なのですよ。ハオ様は
井戸から来たと仰ってました。
きっと、そこにもあったのでは
ないですか?例えば破片などが。」

有り得るな。それは。

「じゃあ、突然塞がった
理由って…」

「月の光が届かなくなったと
いう事です。月の周期か、
はたまた地軸のズレ、
地球の公転…などといった
ところでしょうか?」

…藤姫が賢すぎて
理解ができない…

しかし、ひとつ
言えるとすれば
そんな美しい神の摂理が
原因とは思えない。

あるとすれば
あのコンクリート詰めだ。

ダークな悪の所業、
産廃の不法投棄同様
非合法な出来事が
起こしたと考える方が
しっくりくるというものだ。


 
< 70 / 95 >

この作品をシェア

pagetop