紅一点
『ハオ様?』
いけない。藤姫の
訝しむ声に、ハッとした。
今日は池田屋さんから
こっちの世界の用心棒を
頼まれてきたのだ。
「ねえ、藤姫。
今日から、こちらの
営業開始って聞いたけど。
準備は万端?」
『ええ。それはもう。』
AI太夫が妖艶に微笑む。
ほんっとうに
成長が早い!!
『そもそも人身売買や
他人の資産を巻き上げて
生きてきたクズどもの
解析は当に済んでおります。
あの手の人間が飛びつく
エサは早々に撒き終えて
おりますよ。』
ああ…オンライン
カジノのことか。
“金欲と色欲”
推定年齢100歳超えの
半グレ人間が中毒性を
持つであろうもの……
向こうにも、こちらにも
定住しているとは思えない
ヤツらをこの世界に
留めるための撒き餌を
池田屋さんは仕込んでいた。
カジノへの流入資金の
口座情報から
ターゲットである
ヤツらを特定したのは
藤姫である。
電脳空間は、彼女の庭だ。
他の世界では
ブラックホールになる
黒いトンネル部分も
彼女の眼には
全て見えている。
『サーバーの経由など
子供騙しなのですよ。
ヤツら程度の頭脳では
私に太刀打ちなど不可能。
とは言え、あちらの
世界も私の仲間が
日々この空間の解析を
進め、未知のウィルスが
生み出され、アタックして
きております。
この作戦は
長くは機能しないのです。
ハオ様、今回一発で
仕留めねばなりません。』