紅一点
8章 side 淳之介
ハオと太夫達の仇とやらは
中肉中背の、俺も度々池田屋で
見た事があった奴らだ。
そのうち1人は鼻に
プロテクターをしていて
ハオにアレは何かと聞けば
「あれは、鼻の守護神だね。
いつぞや、骨を折ったのよね。
それで、追いかけられて
ここに来たってわけ♪」
そういって、テヘヘと笑う。
ハオの様な小娘に、
やられるなんて奴らは
たかが腕っぷしも知れてる。
だから、雅也が言ってた様に
ハオも一旦は奴らから
逃げ切れたってことだ。
悪い奴はトコトン悪い。
自分の利益の為には
何だってする。
それは、この遊郭街に
出入りする売人にしても、
経営者にしてもそうだ。
ーーーーそして、客も。
でも、いつだったか
太夫が、それでもこの世界の
非合法はヌルいと言っていた。
この世界の創造者ってのは
相当温く甘い世界で育ったと。
悪いヤツというのは
とことん性根が悪く
こんなもんで済まないと。
池田屋も、ここは、単に創造者が
道楽で己が好きなモノを集めた
世界って所で、
其奴は単なるコレクターだ。
碌でもない趣味と酷評していた。
もっとゲスにまみれた世界。
太夫やハオが生きてきた所は
一体どんなところだったのか…
俺のまとまらない思考も
ターゲットの一言で
現実に引き戻された。
「池田屋さん、今日は
なんや耳寄りな話があるとか?」