紅一点
「ええ、新しい店を始めましたの。
きっと、お気に召しますよ。」
そう言って池田屋は
一見キレイな笑みを浮かべる。
「それはどっちを指すんじゃ?」
スーツ姿からは、想像し難い
発言と下卑た笑い声を携えた
男に視線だけを向けた。
隣でハオも目をまん丸にしている。
「じいさん、いつまでも
好きだねぇ。」
そう揶揄ったのは、
鼻プロテクターの男だ。
「うるせぇよ。若造。
オレはこの為に生きてんのよ。
尽きることのない色欲に
報いるために、肉体を維持し
姫を調達し稼いでるのさ。」
パッと見たところ、ソコソコ20代
程度に感じていたが、違うのか…
そして、最近まで気づかなかったが
コイツらは昔からこんな感じだった。
「お盛んだねぇ。俺はもう
博打一辺倒よ。普通のギャンブルにぁ
あきちまったな。」
少なくとも、俺達がガキの頃から
出立も見た目も大した変化がない。
「もうダメになったのかぃ。
まだまだこれからだってのに。」
爺さん扱いされた方は
嫌そうなそぶりも見せず
クツクツ笑っている。
「いい博打があるんだよ。
ココの女将さんの紹介でね。
これがまた、その辺の投資や
FXやらネットカジノの
比じゃないってのよ。」
「そりゃーいいね。
俺も後で聞かせてもらおうじゃ
ないか。」
欲に塗れた会話に
目の奥が熱くなった。
これが単に遊戯なら
俺もそうなるんだろうが…
今は、気分が悪い。
オンナの人生
何だと思ってやがる。