紅一点
 
コイツらや他の仲介人に
連れてこられた子たちの事を
考えると、心苦しい。

そして、奴らは気づいていない。

自分たちが無意識のうちに
電脳空間に足を踏み入れたことに。

「ようこそおこしやす。」
「お待ちしておりやした。旦那方。」

男衆や女中に、チヤホヤさて
満更でもなさそうな、2人が
滑稽だ。

貴様らは、これからここで、
言葉通り、全身身ぐるみ剥がれて、
搾り取られる。

藤姫が空間の奥、雛壇に
濃紫からラベンダー色に
かけてのグラデーションの
着物を着て佇んでいる。

アイメイクの涼しさと相まって
スゴく迫力がある。

めっちゃキレイ!!

その辺の花魁も太刀打ち
できそうにない。
もはや、女帝の風格。

最初、裾を踏んで
派手にすっ転んでいたとは
到底思えない出立だ。

「キレイだね。」

その一言で、思考が
引き戻された。

…ハオ?

「藤姫は、かわいい。
芯があるからかな。
とっても綺麗。」

何度も頷きながら、彼女は言う。

「ハオ、アンタだって
その気になって、それなりの
格好をすれば、並ぶわよ。」

一言も喋らないとか
結構な条件は
伴うだろうが。

「…それなりの格好
してたんだよ。風俗店で。」

彼女の言葉で体温が下がった
気がした。

…そうだった。
ハオは、元いた世界で
接待酒場的な施設で
働いていたと言っていた。

…どんな客をとっていたか…

俺はこの子に
聞いたことがない。

 

 
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