紅一点
 
理由は簡単だ。

俺が現実を
受け止められないから。

遊郭で、女郎の稼ぎで
養ってもらってきたくせに。

遊郭で色事を覚えたくせに。
オンナを買った癖に。

ハオが、太夫達と似た様な事を
していたとかも…と、いう事が
受け止められない。

ハオを抱いてたであろう男に
殺意を覚えるーーーーー

勝手がすぎて、とても
彼女には言えないけれど。

“それを、オマエがいう!?”
…などと言われることが
心底怖い。

「ほぉ…なんと!なんと!」
「女将!あの女郎は何と申す!?」

男達の下卑た興奮した声に
ハッとする。
ボーッとしている場合じゃない。

「まぁ、お目が高い。
ここの花魁ですよ。

相場の3倍の売れっ子ですが
今日は、旦那方ならば是非と
この子が申しますので
特別に、お座敷のお相手を。」

そう言って、
池田屋は優雅に笑う。

…とは言え、池田屋も
さすがに緊張しているのだろう。
表情が少しかたい。

「なんだ、酒の相手だけか。」

残念そうに色欲ジジイが
眉間にシワを寄せる。

「そう、おっしゃらずに。
今宵は、色よりお愉しみが
ございましてよ。」

池田屋がクスクスと
上品な笑みを浮かべて
機嫌をとりなした。

 
 
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