紅一点
「おおっ。相手は太夫か。
あのオッサン、本気で
ひん剥かれるな。」
思わず、そこにやってきた
対戦相手をみて声を漏らす。
ハオの持ち込んだドレスを
サラリとまとってたたずむ
俺の育ての親は、
メチャクチャ博打に強い。
お座敷遊びであっても
負けなしで、ココらの遊戯場では、
結構有名な話だ。
…なんなら、賭博で
自らの借金も清算できると
言われるほどだ。
「おおお!太夫!
やっちまえ!ぶち殺せ!」
ヒソヒソ声で、
ハオが応援している。
「いや、普通にやっちゃ
ダメでしょ。あんたは直ぐに
目的を忘れるんだから。」
俺たちは、あいつらから
月の石を回収する。
ヤツらが2度と
この世界に往来が
できないようにする。
「まぁまぁ、淳之介。
そんなに気を張ってちゃ
もたないよ。」
そういって、太夫の
野球拳を見ながら、
ハオは炭酸水のはいったボトルを
直に咥えラッパ飲みをする。
「美味しい。ま。チャンスは
必ず来るんだんだから、
待ってなって。」
ハオの唇が水滴と
グロスでテラりと光る。
「全裸になった瞬間
おさえてやる。」
ハオが勝つ気満々の
笑みを浮かべている。
「おー、いーねえ。順調に
むかれてんじゃねえか。
あの博打師、ほんと、なんで
こんなトコロに居続けてんだよ。」
そんな疑問を口にした俺に
ハオはわかっちゃいないと
首を横に振った。
「…戻りたくないんだよ。
あちらには、もう太夫の待人は
いないんだよ。きっと。
恋人も、おそらく両親、家族も
もういないんだと思うよ。」
そう、彼女は言った。