紅一点
「わかりました。
ノリましょう。」
たっぷり悩んだ風に見せたあと
藤姫が大きく頷いた。
「藤姫、お待ちなさいな。
それなら、私のコレも
おかけなさいな。」
そう言って太夫が動いた。
俺たちもソロソロ出番の様だ。
「人身売買と各種悪事による
汚れたハシタ金子だけど。
この賭けピッタリではない?」
藤姫が太夫付きの禿から受け取った
目録を、ポイッと博打師2人に近づき
床に投げた。
「まあ?ホント?使っても
よくって?」
扇で隠し、含み笑いをする
太夫達を他所に、男達は
自分たちが勝つ事を念頭に
会話している。
絵に描いたような博打狂だ。
「へえ、電子マネーかい。
この世界にまではびこるとは
ワビもサビもないねぇ。」
「まあ、そうは言っても
遊郭街は、専用通貨だし、
電子マネーなら換金手間が省けて
いいんじゃないっすか。」
「まあ、なんというか
見事に気付かないもんだな。」
呆れてこぼせば、
俺の掌を両手で解いた
ハオが合点がいった表情をする。
「電子マネーってね。貨幣価値が
変動するんだ。スッゲー
暴落してるか高騰していて、
あれが自分の財産だって事に
気付いてないんじゃないかな。」
ハオは、本当に多少の事には
動じない。この世界に
適しているとはいえ…
「…アンタ、そんなうんちくより
目の前の粗品にちょっとくらい
恥じらうとか反応を示しなさいよ。」
「あの程度、反応に値しない。」
ああ…この子の貞操観念ときたら(涙)
嘆かわしい…教育が必要だ。
「2回戦が始まるようだな。」
ため息混じりの
俺の声を拾ったハオが
再び隣で息を潜めた。