紅一点
9章 side ハオ
 
禿たちが男の着物を
ハンガーにかけようと
脱ぎ散らかしたソレらを
集めている。
無造作に転がるタバコケースに
手を伸ばした時だった。

「ソレに触るんじゃねぇ!」

それまで全裸男と花魁の
お座敷遊びをアテに
チビチビやっていた
プロテクター男が、
禿に向け怒鳴り声をあげた。

禿がビクリと肩を揺らし
侘びながら瞳を潤ませる。

なんだ、あの野郎。
ちっこい子泣かすんじゃねえよ。

「オマエ誰から売られてきた?
器量がよくねえな。
池田屋の看板を汚すだけじゃないか?」

顔を鷲掴みにする男に
同席している重蔵や雅也が
なんとか男を宥めようと
している。

ヌルい!!緩すぎる!
ダメなんだよ!それじゃ!

コイツらは人の弱みにつけ込み
搾取して貶める事に、
愉悦を感じるクズだ。

ふすまを乱暴に開けた。
柱に当たる乾いた音がするが、
気にせずグングン加速して
騒ぎの中央へ進み
近づいていく。

「おい。ガキをいじめんじゃねぇよ!
そこの反社地銀行員!」

勤務先を暴露された男は
驚いた表情をこちらに向けた。

「はい、天誅!」

その言葉と共に
プロテクターで保護された鼻に
全体重をかけて飛び乗った。

「ぎゃあああああああ!!」

顔面に着地した瞬間、
そいつは仰向けに転倒し
断末魔の叫びと共に
床をのたうち回った。

おうおう、痛かろうよ。
もう一回折れたんだからな。

重蔵達に保護された禿を
視界の隅に
体勢を立て直していると
髪をグッと引っ張られる。

「離せ!殺すぞ!変態!」

髪を掴む腕に爪をたて
手を弛ませようと力を込める。

「ああ!?オマエ!
三好の娘か!?
井戸で死んだはずじゃっ?!」

「んなわけねえだろ!バーカ。
干からびた全裸で
近づくんじゃねえよ!!」
 

 
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