紅一点
 

ぎゃー!!その汚い股間を
近づけんじゃねえ!!

私の反応を見て、何か閃いた様に
ジジイは顔面にソコを寄せようと
してくる。

「おい、コラ、テメェ、
何してやがる!?
調子に乗ってんじゃねえよ!
クソ老害!地獄へ落ちろ!!」

怒りに満ちたバリトンボイスが
聞こえたと同時に、
地肌への負担がふっと無くなる。

ああ、淳之介が助けてくれた。

髪を引き戻すように掴みながら
ジジイの顎に向け、好機とばかりに
蹴りを繰り出す。

「このアバズレが!危ねぇな!」

言っておくが、常時であれば
私は基本的に、老人子供など
弱い立場のヒトは守るタイプだ。
これは自分の尊厳のために
言っておこう。

そして、繰り出した蹴りから
体を反転させ、軸足を変えて
流れる動きでタバコケースを
藤姫の方へ蹴やる。

藤姫は、こちらの意図を
汲んでいたのだろう
すかさずソレを拾い上げ
胸元に収めた。

多分、あの中には
月の石が入っている。

あのジジイが持つ、この世界と
ムコウの世界のパスポート

あれだけだろうか?
全部回収しないと
繰り返させてしまう。

「コイツらのケツの穴まで
身体検査した方がいいな。」

呟くと同時に
淳之介に全裸のまま
拘束されているジジイに
手を伸ばした。


 
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