ブエノスアイレスに咲く花
「具合、大丈夫なの?」
僕は白いL字型のソファーに腰掛けて言った。
するとサキは白いチェストの上から、
淡いピンクの皮に彼女たちが【スワロ】と呼ぶ
光る石の並べられたストラップを指にかけて
ケータイを取ると、それを開きながら口を開いた。
「違うの、夕べは本当大変だったわけ、
それで寝不足で、午後は貧血ぎみだったから
早退したんだけど、
会社でた途端に元気になっちゃった」
「精神的な要素もあったわけだね」
「だから今日は早く会いたかったのに!」
サキはケータイを閉じ、ベッドに向かって
それをそっと放った。
そしてそれと同じ方向に向かって、
僕の手を引き、ひと際低いトーンで言った。
「また浮気したのよ、河野くん」