強引な彼にすっかり振り回されています



「ふぅ……これでよしっ……と。」


毎週金曜日の夜は、庭園で土日に開催されるイベント用のエクステリアに設営するのが仕事だ。

基本的には庭園はそのままで照明などの装飾要素を散りばめていくのがメインになるのだけれど、

ちょっとした角度の違いや、数量の違いで雰囲気が全然違ってくるので、微調整には特に時間がかかるのだ。

何とか満足できる仕上がりになったと立ち上がって息をついたタイミングで、足元に人影が落ちた。


「こんな時間まで作業してたのか。」


もう、声だけでドキッとして、誰だか分かってしまう自分に戸惑いながら振り返る。


「西王寺さん。」

「おつかれ。1人?」


片手をパンツスーツのポケットに入れた立ち姿は、さながら王子様のよう。 


「いつものことなんです。みんなの作業が終わってからの微調整についつい時間を忘れちゃって。」

額にじんわりとかいた汗を拭きながら答えると、
西王寺さんの目が柔らかく細められて、


「そういう姿もかっこいいね。」


ふわりと微笑みを投げられた。


「えっ?」


思わず見下ろした自分の格好といえば、何の変哲もない作業着姿。

もちろん、あちこち土まみれになっている状態だ。

「あはは……こんな格好でお恥ずかしい……。」


さらに汗を拭う羽目になった。


「いや?真剣に仕事している紗也ちゃんだからこその装いだろ?恥ずかしいことない。」


また一歩、距離を縮められたと同時に大きな手が伸びてきて。

私の頬をつまむようにして西王寺さんの親指がそっと触れた。


「あれっ、取ってあげるつもりが範囲広げちゃったな。」


今度はいたずらっ子みたいに笑いながら私を見た。

どうやら顔にまで土がついていたらしい。


「西王寺さんの手が汚れちゃいますよ……。」


自分の汗を拭いていたタオルを差し出すのもどうかと思い、何も出来ずにその手を見やる。


「こんなの汚れのうちに入らないよ。
それより……今日はもう終われるの?」

「えっ?あ、はい。区切りがついたので、もう帰ります。」

「そうか。ね、紗也ちゃん、お腹空いてない?」

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