強引な彼にすっかり振り回されています
「ん……。」
朝日の眩しさに目を覚ますと、広く、見慣れない天井がそこにあった。
(あれ……私……)
何も身につけていないことに気づいて、意識が一気に覚醒する。
右、左と顔を動かしてみたものの、大きなベッドには、私ひとりしか居なかった。
「西王寺さん……?」
乱れたシーツを身体に巻きつけてベッドから降りると、心地良い疲れを全身に実感した。
デスクテーブルまで移動すると、新しいペットボトルの乗せられたメモ用紙があることに気づく。
『おはよう。仕事が入った。』
少しクセのある整った文字が愛おしく思えて、そっと指でなぞってみる。このメモは持ち帰り決定だ。
改めて部屋を見渡せば、その広さにあらためて驚く。
ソファーを見れば、昨夜のハイブランド紙袋が載せられていた。
(いつの間に……)
部屋に来た時はなかったはずのそれを覗くと、私の作業着にクリーニング済のタグが付いていて、完璧すぎる扱いに感動する。
昨日のキスの後だって、いつもの勝手さは影を潜め、それはそれは優しい扱いを受けた。
『っ……紗也ちゃん……』
西王寺さんの声がリフレインしてしまい、心臓がキュッとなる。
既に7時を過ぎている時計を見て、今日が定休の土曜日で良かったと思う。
8時半にはマナちゃんたちが出社してくるので、バッタリ出会ってしまわないように時間を逆算しながら身なりを整えた。
土曜日のオフィスビルはロビーもひっそりとしていて人も疎ら。
もしかしたら西王寺さんとすれ違ったりして……などと淡い期待をしていたものの、それは実現することなく私はビルを後にする。
(ここのホテルに泊まる日がくるなんて)
平静を装いながらも、駐車場に向かう私の足取りはとても軽やかだ。
これからは横着せずに、ちゃんと私服で通勤しようと手に持つ紙袋を眺めながら思った。