強引な彼にすっかり振り回されています
仕事の依頼がなければ接点のまるで無い私たちは、それから2か月くらい何の音沙汰もなく日々を過ごし、
フラワーショップのマナちゃんから西王寺さんの「さ」の字も出なくなってきた頃。
「元気そうだね、紗也ちゃん。」
店先の商品を手入れしていたら、ふいに声が降ってきた。
「西王寺さんっ!」
嬉し恥ずかし、どんな顔をすれば良いのかわからないまま、声には嬉しさが混ざってしまう。
今日もスーツをサラリと着こなしている姿に、この前ベッドでの無防備な姿がダブってしまい、顔に熱が集まる。
「ブーケ程度のサイズでアレンジを1つもらえる?」
「はい!どのような用途ですか?」
心なしか、いつもより自分の声のキーが上がってしまっている気がして、すっかり浮かれているのだと思う。
「見合い相手に、手土産用で。」
ーーカシャンっ!
「あっ、し……失礼しましたっ!」
私としたことが、手にしていた切り花用ハサミを落としてしまった。
「えー……っと、お相手の方のイメージに合わせてお造りできますが、どんな方ですか?」
ハサミを拾い上げながら業務的な会話をするのがやっとだった。
とても顔を見ることができない。
「知らん。」
「えっ?」
思わず顔を上げて西王寺さんを見てしまった。
「本人は後回しで家同士が勝手にセッティングしただけなんだ。だからテキトーに頼む。」
「わっ……わかりました……。20分ほどお時間いただけますか?」
「了解。じゃあちょっと他の店を回ってから戻るようにするよ。よろしく。」
私の心を鷲掴みにする笑顔を残して、西王寺さんは去っていった。
私は上手く笑顔で返せていただろうか。
「店長、大丈夫ですか?」
マナちゃんがラッピングの準備をしながら私に声を掛けてくれる。
「やっぱり御曹司って、お家同士の政略結婚的な話が本当にあるんですねー!」
「ホント、びっくりだよねっ!」
自分でも嫌になるくらいカラ元気な声になってしまったと思う。
「とりあえず、喜んでもらえるようなブーケにしなきゃね。」
自分へ言い聞かせるように言いながら、花を選んだ。