婚約破棄するはずが、一夜を共にしたら御曹司の求愛が始まりました
「紅」と、思わず彼女の名を呼んでしまってから、自分の失態に気がついた。気づかぬ振りで、通り過ぎてしまえばよかった。
宗介は莉子を待たせているし、紅もひとりではなかったから。
一緒にいる男が、彼女の同僚であることにはすぐに気がついた。紅自身はもう忘れているかも知れないが、以前に職場の飲み会で撮ったという写真を見せてもらったことがある。そこにうつっていた男に間違いないだろう。
元々、宗介は人の顔を覚えるのが得意なほうではあるが、彼の顔をはっきりと記憶していたことには理由があった。紅との距離がやけに近かったからだ。瞬間を切り取っただけの写真からも、普段の仲の良さが伝わってくるような、そんな距離感だった。
そして、今も、距離が近い。知らぬ人間が見れば恋人同士にしか見えないような親密さで、ふたりは笑い合っていた。
もちろん、ふたりの仲を疑っているわけではない。他に好きな男がいる状態で宗介とどうこうなるほど、紅は器用ではないだろう。だが、恋愛感情がないなら問題ない。そう言い切れるほどの包容力は宗介にはなかった。
どんな感情だろうと、紅が他の男と親しくしているのは気分のいいものではない。
立花モモとの写真を見たときの彼女の心境を、そっくりそのまま今度は宗介が味わうことになった。
宗介は莉子を待たせているし、紅もひとりではなかったから。
一緒にいる男が、彼女の同僚であることにはすぐに気がついた。紅自身はもう忘れているかも知れないが、以前に職場の飲み会で撮ったという写真を見せてもらったことがある。そこにうつっていた男に間違いないだろう。
元々、宗介は人の顔を覚えるのが得意なほうではあるが、彼の顔をはっきりと記憶していたことには理由があった。紅との距離がやけに近かったからだ。瞬間を切り取っただけの写真からも、普段の仲の良さが伝わってくるような、そんな距離感だった。
そして、今も、距離が近い。知らぬ人間が見れば恋人同士にしか見えないような親密さで、ふたりは笑い合っていた。
もちろん、ふたりの仲を疑っているわけではない。他に好きな男がいる状態で宗介とどうこうなるほど、紅は器用ではないだろう。だが、恋愛感情がないなら問題ない。そう言い切れるほどの包容力は宗介にはなかった。
どんな感情だろうと、紅が他の男と親しくしているのは気分のいいものではない。
立花モモとの写真を見たときの彼女の心境を、そっくりそのまま今度は宗介が味わうことになった。