婚約破棄するはずが、一夜を共にしたら御曹司の求愛が始まりました
 お似合いだ、と思ったのだ。紅は宗介といるときより、リラックスして自然な笑顔を見せているように思えた。

 紅の同僚はしっかりした、堅実そうな男だった。それでいて、どこか少年のような無邪気さも残していて、つまらない男という印象は与えない。世の女性が結婚相手に望む、理想像のような男だと宗介は思った。
 紅が望んでいた、普通の恋愛や結婚の相手には彼のような男がふさわしいのかも知れない。

 今はそんな目では見てはいないだろう。けれど、そのうちに紅は気づくかも知れない。身近に、自分の理想をかなえてくれるであろう男がいることに。
 そう思うと、感情が激しく揺れて、宗介は平静を保ち続ける自信がなくなった。今は少しでも早くこの場を離れたかった。つまらない嫉妬をしていることなど、紅にも、この男にも悟られたくはなかった。

 適当な挨拶だけで、早々にふたりから逃げ出した。紅が追いかけてきていることなど気がついてもいなかった。

 莉子はすぐに見つかった。例のごとく、また小さな騒動を起こしていたからだ。
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