婚約破棄するはずが、一夜を共にしたら御曹司の求愛が始まりました
「あ~今の騒ぎで悪酔いしたかも。歩けないから抱っこしてよ」
そんなことを言いながら、彼女がしなだれかかってきた。こういう演技をする女性は数多く見てきたが、演技であることをここまで隠さないのは莉子くらいのものだった。
「嫌だ。車はすぐそこだから」
と、その時だった。自分を呼ぶ紅の声が聞こえたような気がした。幻覚かとも思ったが、念のため振り返るとそこに紅がいた。
「紅……」
複雑な気持ちだった。同僚の男を置いて自分を追いかけてきてくれたことは、素直に嬉しい。だが、タイミングが悪い。宗介は自分の感情を処理しきれていない状態だったし、莉子という爆弾もある。
そして、危惧した通りに、宗介がなにか言うより先に莉子は口を開いてしまった。
最悪の状況だ。宗介は頭を抱えた。去っていく莉子と紅とを見比べた。
紅への説明を優先すべきだということは頭では理解していた。ただ、今はうまく話せる自信がなかった。うっかりすると、さっきの同僚の男のことを紅に問いつめてしまうかも知れない。自分も莉子とふたりでいることを棚にあげて。
『あいつに口説かれたのか』
『なぜ、ふたりきりでいたんだ』
絶対に口にしたくない、陳腐でかっこ悪い台詞が脳裏に浮かぶ。
酔っ払いの莉子が気がかりだ。それは自分への言い訳だった。宗介は紅から逃げた。
「彼女はイトコだ。ひどく酔ってるから、ごめんな」
言い訳がましくそう付け足したが、紅はぼんやりとしていて聞こえていたのかはよくわからなかった。
そんなことを言いながら、彼女がしなだれかかってきた。こういう演技をする女性は数多く見てきたが、演技であることをここまで隠さないのは莉子くらいのものだった。
「嫌だ。車はすぐそこだから」
と、その時だった。自分を呼ぶ紅の声が聞こえたような気がした。幻覚かとも思ったが、念のため振り返るとそこに紅がいた。
「紅……」
複雑な気持ちだった。同僚の男を置いて自分を追いかけてきてくれたことは、素直に嬉しい。だが、タイミングが悪い。宗介は自分の感情を処理しきれていない状態だったし、莉子という爆弾もある。
そして、危惧した通りに、宗介がなにか言うより先に莉子は口を開いてしまった。
最悪の状況だ。宗介は頭を抱えた。去っていく莉子と紅とを見比べた。
紅への説明を優先すべきだということは頭では理解していた。ただ、今はうまく話せる自信がなかった。うっかりすると、さっきの同僚の男のことを紅に問いつめてしまうかも知れない。自分も莉子とふたりでいることを棚にあげて。
『あいつに口説かれたのか』
『なぜ、ふたりきりでいたんだ』
絶対に口にしたくない、陳腐でかっこ悪い台詞が脳裏に浮かぶ。
酔っ払いの莉子が気がかりだ。それは自分への言い訳だった。宗介は紅から逃げた。
「彼女はイトコだ。ひどく酔ってるから、ごめんな」
言い訳がましくそう付け足したが、紅はぼんやりとしていて聞こえていたのかはよくわからなかった。