婚約破棄するはずが、一夜を共にしたら御曹司の求愛が始まりました
 莉子をつかまえると、グチグチ言っている彼女を無視して車に押し込んだ、無言のまま渋谷区にある実家まで走る。
 到着すると、ちょうどパーティーがお開きになり、客人たちが帰っていくところだった。

「もう遅かったじゃない。せっかくだから、お客様に宗介と莉子ちゃんをご紹介しようと思ってたのに」

 プリプリしている麻子を、夫である亮司がなだめた。

「まぁまぁ。宗介はともかく莉子ちゃんは疲れているだろう。今夜はゆっくり休んでくれ。宗介も泊まっていったらどうだ?」
「いや、悪いけど俺は帰るよ。莉子を送りに来ただけだから」
「え~。うちに来るのも久しぶりだって言うのに、冷たい子ね」

 宗介は両親と莉子を見据えると、きっぱりとした口調で言った。

「そうだな。せっかく顔を合わせたことだし、伝えておきたいことがある」
「なによ、改まって……」

 麻子は小首をかしげた。

「結婚のことだよ。俺はあの約束通りに、紅と結婚したいと思ってる。彼女の心が決まるまで、いつまででも待つつもりだ。だから、余計な口出しはしないで欲しい。……お願いします」

 宗介は頭を下げた。なんとなくの勘でしかないが、莉子が急に結婚などと言い出したのは、自分の両親の口出しがあったからではないかと思った。それを確かめておきたかった。
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