婚約破棄するはずが、一夜を共にしたら御曹司の求愛が始まりました
「えっと……狭い家ですが……」
「お邪魔します」
紅は緊張しているのか少し声が上擦っている。宗介もなんとなくソワソワした気持ちで、出されたスリッパに履き替えた。
紅のマンションは駅から徒歩圏内のごくごく普通の1LDKだ。就職を機に引っ越してきたはずだから、彼女はもう二年ほどここで暮らしていることになる。
送迎でマンションの前までは来たことがあったが、部屋に入るのは初めてだった。……あまりにもプラトニックな関係を長く続けすぎたのかも知れない。だから、紅に男として意識してもらえなくなったのだろう。宗介はこれまでの自分の行動を、ほんの少し悔いた。
部屋を見渡した宗介は、とても彼女らしいなとの微笑ましく思った。オフホワイトを基調にしたシンプルなインテリアで、隅々まで掃除が行き届いている。
キッチンには洗い終えたフライパンや皿が並べて置かれており、多少の生活感を感じさせる。紅の丁寧な暮らしぶりが想像できる部屋だった。
「これ、ジャケット。忘れないうちに返しておくね」
宗介のジャケットは、わざわざ百貨店の包装紙にくるまれた状態で主の元へ帰ってきた。
紅らしい気遣いだ。彼女は本当に育ちがいいのだ。資産の有無や家柄ではない。正しい意味での育ちの良さだ。
「ありがとう」
「こちらこそ。珈琲、紅茶、缶ビールでよければお酒もあるけど……どうする?」
「お言葉に甘えてビールをもらってもいい?」
車だったから、さきほどの中華屋では酒は頼めなかった。
「お邪魔します」
紅は緊張しているのか少し声が上擦っている。宗介もなんとなくソワソワした気持ちで、出されたスリッパに履き替えた。
紅のマンションは駅から徒歩圏内のごくごく普通の1LDKだ。就職を機に引っ越してきたはずだから、彼女はもう二年ほどここで暮らしていることになる。
送迎でマンションの前までは来たことがあったが、部屋に入るのは初めてだった。……あまりにもプラトニックな関係を長く続けすぎたのかも知れない。だから、紅に男として意識してもらえなくなったのだろう。宗介はこれまでの自分の行動を、ほんの少し悔いた。
部屋を見渡した宗介は、とても彼女らしいなとの微笑ましく思った。オフホワイトを基調にしたシンプルなインテリアで、隅々まで掃除が行き届いている。
キッチンには洗い終えたフライパンや皿が並べて置かれており、多少の生活感を感じさせる。紅の丁寧な暮らしぶりが想像できる部屋だった。
「これ、ジャケット。忘れないうちに返しておくね」
宗介のジャケットは、わざわざ百貨店の包装紙にくるまれた状態で主の元へ帰ってきた。
紅らしい気遣いだ。彼女は本当に育ちがいいのだ。資産の有無や家柄ではない。正しい意味での育ちの良さだ。
「ありがとう」
「こちらこそ。珈琲、紅茶、缶ビールでよければお酒もあるけど……どうする?」
「お言葉に甘えてビールをもらってもいい?」
車だったから、さきほどの中華屋では酒は頼めなかった。