婚約破棄するはずが、一夜を共にしたら御曹司の求愛が始まりました
「もちろん。じゃ、おつまみ用意してくるね」
「いやいや、そこまでは……」
「冷蔵庫のあまりものだから、期待しないで」

 紅はにこりと微笑んでキッチンへと向かう。彼女が準備をしてくれている間に、宗介は旬に電話をかけ事情を説明した。

『なるほどね……了解。どこの媒体か、すぐに確認する』
「頼む。まぁ最悪、あの程度の写真なら記事にされても構わないよ。その代わり、キャンペーンの宣伝もしっかり入れるよう交渉してくれ」
『あぁ、それもアリだな』

 宗介自身はそういった下品な売り方は好まないが、話題になることは間違いないだろう。今回に限っては、会社にとってはプラスに働く可能性もある。

『で、家はどうするんだ?』
「マスコミにチョロチョロされるのは落ち着かないから引っ越すつもりだ」

 こういう時のための賃貸暮らしだ。

『持ってるマンションのどこかに行くのか?』
「あれは全部投資用だし、空きがあったかなぁ」

 宗介は自分の城には身軽な賃貸を選んでいるが、マンションや別荘はいくつか所有していた。だが全て資産運用のためのもので、自分が住むという前提では選んでいない。適した物件があっただろうか。

『小宮山さんに頼んで確認してもらえばいいさ。別件で彼女に連絡しようと思ってたところだから、俺から話しておくよ』
「助かるよ。会社から車で30分以内。これ以外の条件は贅沢言わないと伝えてくれ」
『了解。引っ越し時期は? 長期のホテル暮らしは不便だろうし、早いほうがいいだろ?』
「あぁ、もち……」
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