婚約破棄するはずが、一夜を共にしたら御曹司の求愛が始まりました
「小悪魔そのものだよ。長年待ってようやく手に入ると思ってたのに、突然の婚約破棄だし……そのくせ、こうやって同居は許してくれたりね。俺は紅に振り回されっぱなしだ」

 宗介は嘆くように天井を仰いだ。

(たしかに……言葉にされると私の行動って最低かも……)

 紅はしゅんと肩を落とした。

「嫌いになってもいいよ。それだけのことしてる自覚はある」

 ふいに、背中に重みを感じた。ドライヤーを置いた宗介が後ろから紅を抱きしめたからだ。
 うなじのあたりに彼の吐息がかかって、くすぐったくてたまらない。

「それができないから、困ってるんだ。俺はどうしたら紅を嫌いになれるのかな?」
「ど、どうしたらって……」
 
 宗介の唇が紅の首筋をなぞる。びくりと大きく、紅は背中をのけぞらせた。宗介が嬉しそうに笑うのを気配で感じた。

「かわいい反応。もっと見たくなる」
「えっと……その……」

 この甘ったるい空気をどうしたらいいのか、紅にはわからなかった。
 また彼に抱かれてしまったら、今度こそもう戻れない。そんな気がした。

「そ、宗くん」
「いい加減諦めて、俺のものにならない?」

 振り返った紅に、宗介はゆっくりと顔を近づけた。唇が重なるその瞬間に、思わぬ邪魔が入った。いや、紅にとっては助け舟だったのかも知れない。

 宗介のスマホに着信があった。相手は彼の秘書のようだ。
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