【完】囚われた水槽館~三人の御曹司からの甘美な誘愛~
掴まれた手を掴み返して、強引に引っ張ると智樹さんの足元がふらついた。
「離せ」言い終わる前に智樹さんの熱い体が私の方へ倒れ込んでいく。
こんなになるまで疲れているのに、あんな冗談ばかり言って…。この人が心の奥底で抱えている物は一体何なんだろう。
坂本さんに手伝ってもらって智樹さんを部屋まで運び、熱を測ると38度超えていた。 濡れた体を拭いて、着替えさせてベッドに寝かせると智樹さんは唸りながら目を瞑った。
苦しそうだった。 酷い事をされて、囚われている筈なのに、どうしてこの人を心の底から嫌いになれないのだろう。
会ったばかりの頃、どこか懐かしい感じがしたからだろうか。 まるで遥か昔、どこかで会った事があるような…。
椅子に座りその寝顔を見つめていると、智樹さんはうわ言の様に何かを呟いていた。
ゆっくりと耳を近づけると「すまない…」と聴こえた。 智樹さんが何にここまでうなされて、誰に許しを乞うているのかは分からない。 けれども彼の声はやっぱりいつだって悲しい。
それが私が彼を嫌いになれない理由の一つなのだろうか。
私の中で母に優しくしてもらった記憶はほぼない。
けれど小さかった頃熱を出してしまった時に、何度か看病をしてくれた。
その時母は私の頭を撫でて、子守唄を歌ってくれた。 その歌を聴くと何故か心が落ち着いていった。 何故それを今思い出したかは分からないけれど、大きく口を開いて息を吐いた。
天井に向かい、懐かしいメロディを口ずさむ。