【完】囚われた水槽館~三人の御曹司からの甘美な誘愛~
「そうなんですね。昔母が、熱を出した時に歌ってくれてたんです。
母の思い出なんかあまりないけれど…。
まるで光が差し込んでくるような、救われるような歌だったんです」
「まりあ、か…」
「え?」
「聖母マリアなんて、大層な名を付けられたもんだ」
「それは…確かに私には似合わない名前だと思うけど…
母が勝手に付けた名前ですし」
ちらりとこちらに目を向けた智樹さんは小さく笑い、ゆっくりと目を閉じた。
「…君に、よく似合っている…」
冷たくなったり、優しくなったり、突き放したかと思えば、その手を優しく握る。
ますます彼の事が分からなくなる。
「そういえば、お粥を作ったんです。もし食べられるようであれば…
私今持ってきます。料理は上手じゃないから、美味しくないかもしれないけれど」
そう言って立ち上がろうとしたら、握りしめた手の力が僅かに強くなった。 智樹さんは眉を下げてやっぱりもの悲しい顔をする。
「とも…き…さん?」
「歌を…」
「え?」
「もう少し、俺の側で歌を歌ってくれないか…?」