転生令嬢はご隠居生活を送りたい! 王太子殿下との婚約はご遠慮させていただきたく
(皆、きっと心配してる……)

 母の手を離すんじゃなかった。アイリーシャが誘拐されたことで、母は責任を感じているのではないだろうか。
ひっくひっくと泣いていたら、柔らかなベッドの上に放り出された。それからもう一度ベッドがきしんで誰かが隣に投げ出される。

「いいか、声を出すんじゃないぞ。窒息したら面倒だから、布は外すぞ。大きな声を出したら、殴るからな」

 こくこくとうなずけば、目隠しと口に押し込まれていた布が外される。
 隣に目をやれば、そこにいたのはアイリーシャ同様、ぐるぐると縛られた男の子だった。正面から目が合い、男の子は情けなさそうに眉を下げた。

「いいか? おとなしくしているなら、縄は解いてやる。約束できるか?」

 そう声をかけてきたのは、この家で待っていたらしい男だった。どうやら、この男が指導者的立場のようだ。
 アイリーシャの目の前で、男がわざとらしくナイフをひらひらとさせたので、アイリーシャはまた、こくこくと首を振った。隣の男の子も、うんうんとうなずいている。
手足を拘束していた縄をぽいっと放り出すと、まじまじとアイリーシャの顔を見つめた。

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