転生令嬢はご隠居生活を送りたい! 王太子殿下との婚約はご遠慮させていただきたく
「これはまた……いい商品だな。大人になるのが楽しみだ。高く売れそうだ」

 顎に手をかけられ、背筋がぞくりとする。

(……この人達、人身売買をしているの……!)

 また、じわじわと目に涙が浮かんできた。
 隣にいる男の子が、少しばかりアイリーシャの方に身を寄せてくる。力づけるように、腕に手をかけられ、ようやく息を吐きだした。

「そっちの坊主もおとなしくしておけ。いいな」

 そちらには視線をやらなかったから、男の子がどう返したのかはわからない。けれど、かすかに首を振る気配がした。
 おとなしくしている二人の様子に満足したらしく、男は部屋を出ていく。声を潜めるつもりはないらしく、隣の部屋の会話がここまで聞こえてくる。

「娘の方は、どうするんだよ?」
「いつものやつに連絡すれば、すぐに買い手はつくだろ。どうせ、警備が緩くなるまでは逃げ出せない」
「そうだな、しばらくは動けないし……あれだけの美貌なら、欲しがるやつは山ほどいるか」

 縄を解かれたことで、ようやく落ち着きを取り戻したアイリーシャは、男達の会話をしっかりと記憶した。
< 52 / 284 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop