転生令嬢はご隠居生活を送りたい! 王太子殿下との婚約はご遠慮させていただきたく
 アイリーシャは、"隠密"スキルを解除して、男の子の隣に戻る。彼は、びっくりしたように目を丸くした。

「リーシャ、かくれんぼ得意って言ったでしょ? リーシャと手を繋いでいたら、お兄さんも見えなくなるよ」

 アイリーシャがそう言うと、彼は考え込む表情になった。

「僕達は縛られていない……ということは、チャンスをうかがえば、逃げ出す機会は十分あるということか」

 この家の外に出てしまえば、彼かアイリーシャを探している人に援護を求めることもできるだろう。
見た目の年齢通り、二人そろってわあわあ泣いていたら、逃げ出す算段なんてできるはずもない。

「音は出しちゃダメ。見えなくなるだけなの」
「わかった」

 "隠密"はあくまでも気配を殺すためだけのものである。
 呼吸もできるだけ密かに行わなければならないのだ。目の前にいるのに認知されない、そのためのものだから、存在を限界まで希薄にしなければならない。

「わかった」

 でも、彼の様子なら大丈夫だろう。
改めて窓の外をうかがってみる。どうやらここは、下町にある一軒家のようだ。遠くから、祭りの喧騒が聞こえてくる。

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