転生令嬢はご隠居生活を送りたい! 王太子殿下との婚約はご遠慮させていただきたく
 しばらくの間、アイリーシャの部屋は大騒ぎとなった。母はアイリーシャを抱きしめるし、兄達はベッドに絵本やおもちゃやお菓子を積み上げ、母に叱られる始末だ。

(こんなに心配させてしまったのね……)

 もとはと言えば、アイリーシャが母の手を離してしまったのが悪い。倒れていたのは一晩だというのに、母はげっそりとやつれていた。

「お父様は?」
「お父様は、今、王宮に行っているの。アイリーシャが目を覚ましたと聞いたら、すぐに帰ってくると思うわ」
「父上は、アイリーシャを連れて行った悪いやつらを探しているんだ」
「ルジェク! その話はアイリーシャの前でしてはいけません!」

 母に叱られた長兄が肩をすくめた。
 巻き込まれた形ではあるが、公爵家令嬢であるアイリーシャが誘拐されたとなると、大問題だ。父は、王宮でそちらの始末に追われているのだろう。
 母は、アイリーシャの耳には詳しいことを入れるつもりはないようだ。母に叱られたルジェクも、口を閉じた。

「お兄さんは? おうちに帰れた?」

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