転生令嬢はご隠居生活を送りたい! 王太子殿下との婚約はご遠慮させていただきたく
「お父様、頭痛い」
「それは、魔力を使ったから、だなぁ……」
「魔力?」

 神様から魔力について知らされてはいるけれど、知らないふりを貫く。地味に目立たず、その他大勢の一人に紛れ込む。
 その目標はまだ、かわってはいないのだ。

「まだ、魔術について勉強する時期じゃないからねぇ……ミカル殿が言うには、まれに幼い頃に魔力に目覚める者がいるそうだけれど」

 神様から直接教わったから、アイリーシャは知っている。
 教会で身に着けるより前に魔術を自然発生させることができた者は、天才と言われるのだ。

(……それって、人目につくってことよね……)

 目立たない人生、どこに行った。
 だが、やってしまったことはしかたない。少なくとも、あの男の子は無事に保護されたわけだし、アイリーシャも売り飛ばされずにすんだ。

「公爵閣下、失礼します」

 入ってきたのは、アイリーシャの誕生日に花束を届けてくれたミカルだった。齢十五にして王宮魔術師となった天才少年。
 彼は、アイリーシャの前に膝をついた。ベッドに座っているアイリーシャの方が、彼より頭の位置が高くなる。

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