HONEYBEE(2)~ハイスぺ社長と二度目のウエディングベル~
「悪いな…葵」

不意に聞こえて来た懐かしい低いテノールボイス。

私は椅子から立ち上がり、振り返る。

「別に立ち上がらなくても…」

二人だけで挙式しようと言って、ハワイのチャペルに私を先に行かせ、自分はそのままドタキャンして、逃げるようにアメリカに行ってしまった男。

私はツカツカとヒールで彼の前に歩み寄り、対峙する。

四年前と変わらない高身長に上質なオーダーメイドの細身のスーツを着こなしていた。
黒髪をツーブロックスタイルに整え、野心に溢れた鋭く涼しげな切れ長の双眼、高い鼻梁に程よい肉厚のキレイでエロチックな唇。

懐かしい端整な顔が私の瞳の中に映り込んでいた。
彼は永遠の愛を誓い、一生連れ添う覚悟を決めた私の伴侶。
「!!?」
殴ろうと立ち上がったはずなのに、彼の何度も抱かれた胸板と懐かしい匂いに魅了されてしまった。
今まで、莉緒の為に押さえつけていた充斗に対する恋情が心の最深部から蘇る。

私は彼の前でこともあろう女に戻ってしまい、動きが止めてしまった。
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