HONEYBEE(2)~ハイスぺ社長と二度目のウエディングベル~
父の死

~充斗side~

父の病室からけたたましく響く電子音。
「アレストだ…」

「えっ?」

四宮先生は血相を変えて、病室に飛び込んだ。

「四宮先生…大変です…宇佐美さん」
「分かってる…」

蒼白した看護師の顔。
病室には警笛のように電子音が響き渡る。


「アレストとは何だ?柏原」

「心肺停止です…」

「えっ?」


四宮先生は慌てて、父の心臓マッサージを始める。

「社長、俺の方から春斗様にご連絡を入れて参ります」

「頼む。柏原」

俺の鼓膜に響く電子音は父の心臓が止まった音。

愛する妻の命を奪った俺を憎み、決して愛そうとはしなかった父。

でも、俺にとってはたった一人の家族。

これで、父の干渉から解放され、葵と一緒になれる。

そうだ・・・これで、俺は葵と莉緒の三人で仲良く暮らせる。

目の前で医師として、必死に父の蘇生を行う四宮先生。
そんな彼の姿を見て、俺は人としてどうかしてるコトに気づく。

どんな親でも、この世に産まれて来れたのは父と母が出逢ったおかげだ。

「父さん!!?このまま逝かないでくれ!!」

俺はまだ謝罪して貰っていない。
葵との仲を許して貰っていない。

何よりも孫の莉緒を見せていない。


俺はこと切れた父に呼びかける。

死んで、どんな機能が停止しても、耳は最後まで聞こえていると言う。

「父さん!!俺と葵の間に莉緒が生まれた…あんたの孫だ!だから、まだ逝かないでくれ!!」

俺は父に涙を流して訴えた。






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