耽溺愛2-クールな准教授と暮らしていますー
二度目の「いただきます」をして、フォークとナイフを取ろうと伸ばした美寧の手がハタと止まった。

「あれ、フォークとナイフがない……」

さっき食べた皿を下げた時にうっかり一緒に下げてしまったのだ。
新しいものを取って来なければと思い、美寧は「私取って来るね」と立ち上がりかけた。けれどそれを怜に引き留められた。

「これはこのまま手で食べたらどうですか?」

「え、手で?」

「はい。こうやって———」

怜は自分の分を一つ手に持つと、そのままそれを口に運んだ。具を一つもこぼすことなく上手に口に入れる。大胆な行動に美寧は目を丸くした。

美寧はあまり手で物を食べたことは無い。大抵箸かフォークとナイフといったカトラリーを使う。小さなころからそうして食べて来たので、“食事をする”というのはそういうものだと思っていた。手で食べるのは作法がなっていないことだと教わって育った。

そんな美寧の目の前でベーグルを手に持つ怜。その食べ方はとてもきれいで、そしてなぜかとても美味しそうに見える。美寧は恐る恐る自分のベーグルを両手で持ち上げた。

ゆっくり。まっすぐ。

上に乗っている具を落とさないよう水平に持って、顔の前まで持ち上がったそれに、思い切ってパクリと食いついた。

(お、おいしいっ!)

口に物が入っているのと、うっかりすると具をこぼしそうなので心の中だけで感嘆の声を上げる。向かい側に座る怜の目元と口元が緩んだ。心の声は十分怜に伝わったようだ。

リンゴの甘酸っぱさと一緒に、甘くほくほくとしたものがあることを感じる。

(なんだろう………)

シナモンの香りが鼻から抜ける。塗られた白いものがクリームチーズだったこともすぐに分かった。

ホクホクの正体が何かを考えながらモグモグと口を動かし、ゴクンと飲み込んでから「うーん」と考え込んだ。

「………さつま芋?」

「正解です」

にっこりと怜が微笑んだ。
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