耽溺愛2-クールな准教授と暮らしていますー
美寧はキッチンから紅茶セットを一式、トレーに乗せてダイニングテーブルに運ぶ。慣れた手つきで茶葉をすくってポットに入れていく。

祖父と暮らしていた時、朝食の紅茶を淹れるのは美寧の大事な仕事だった。
祖父の家で働いていた歌寿子(かずこ)も賢輔(けんすけ)も、紅茶を淹れることだけはしなかった。それはその役目を美寧がとても大事にしていることを知っていたからだ。

時々美寧が淹れた紅茶で、四人でテーブルを囲んで和やかなティータイムを取ることもあった。自分の淹れた紅茶でみんなが『美味しい』と笑顔になってくれるのが、美寧は何より嬉しかった。

藤波家(ここ)で紅茶を淹れることにもすっかり馴染んだ。ティーセットの場所や茶葉の種類だけでなく、怜の好みも把握済みだ。
好きな人の「美味しい」という言葉と微笑みの為、美寧はここでもその役目を誰にも譲る気はなかった。


沸いたお湯をティーポットに勢いよく注ぎ、ティコジーを被せる。そして砂時計を返した時、怜がキッチンから戻ってきた。手に持った皿をテーブルの上に置く。

「わわっ、すごくおいしそう!」

思わず美寧が歓喜の声を上げたのは、もう一つのオープンベーグルサンド。半分にカットされたベーグルの上に、四角くカットされた具がゴロゴロと乗っていた。
ベーグルには白いクリームがたっぷりと塗られ、つやつやと甘く煮られたリンゴの間に、レーズンの濃い紫がのぞく。

うっかりそれに魅入っているうちに砂時計の砂が落ち切り、美寧は慌てて二人分の紅茶を淹れた。ティーカップを怜の前に置く。

「ありがとうございます」

お礼を言われて美寧は「こちらこそ、ありがとう」とはにかんだ。
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