耽溺愛2-クールな准教授と暮らしていますー
[2]


ふわり。
美寧は何か柔らかいものに包まれた感触に気が付いた。
瞼を持ち上げる。

「すみません。起こしてしまいましたね」

そこには申し訳なさそうに眉をさげて自分を見下ろす怜がいた。
自分の上には大判のひざ掛けが掛けられている。

「ん……私、……寝ちゃってたの?」

確かさっきまでスケッチをしていたはずなのに———

ブランチのベーグルをうっかり食べ過ぎた美寧は、休憩を兼ねて縁側でのんびり写生をしていた。
縁側の相棒である大型ビーズクッションに背中を預け、立てた両膝にスケッチブックを乗せて庭を眺める。藤波家の庭の片隅を、咲き終わり間近の秋桜(コスモス)千日紅(センニチコウ)がそれぞれ彩っていた。

庭全体の景色を鉛筆で下書きしていたはずなのに、今の美寧の手には何も握っておらず、膝に乗せていたスケッチブックも見当たらない。寝起きでぼんやりしながら探してみる。

「スケッチブックと鉛筆はちゃんとそこにありますよ」

軽く指を揃えた手が指した方に顔を向ける。
スケッチブックと筆記用具は、美寧が背にしているクッションの隣にきちんと重ねて置かれていた。

どうやら自分は絵を描きながら眠ってしまったようで、それならきっとスケッチブックも鉛筆も床に転がっていたはずだ。
誰がきちんと揃えて置いてくれたのかは、寝起きの頭でも一目瞭然。

「ありがとう、れいちゃん」

「どういたしまして。今日は暖かいですが、昼間も少し冷えるようになってきました。うたた寝で風邪を引かないようにしてくださいね」

「うん……気を付けるね。ひざ掛けもありがとう」

微笑んで見上げると、頭を撫でられ額に柔らかな口づけが落とされた。

美寧は彼の手が大好きだ。頭を撫でられると祖父にされたのと同じように心の奥に火が灯ったように温かくなる。
それが嬉しくて「れいちゃん大好き」と口にすると、頭を撫でていた手が一瞬止まった。
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