耽溺愛2-クールな准教授と暮らしていますー
(あれ?)

何かおかしなことを言ってしまっただろうか。

今は亡き祖父によくそう言っていたせいで、美寧は思ったままに『大好き』と言ってしまう癖がある。

一時期は怜への気持ちと祖父への気持ちの違いに戸惑い、それを口に出せなくなっていたけれど、怜のことを『一人の男性としてちゃんと好きだ』と告白してからは、また以前のように彼に『大好き』と言えるようになった。

「えっと……れいちゃ、」

何か変だったかと訊こうとした時。

「俺も好きですよ、ミネ」

と低い声が囁き、ふわりと体を持ち上げられた。
一瞬で視界が変化する。

美寧の目に映るのは秋の庭、お腹の前で交差する長い腕、そして体の下には怜の長い足。

さっきまでクッションに背中を支えられて横になっていた美寧の体は、今は彼の膝の上に座り、後ろから包まれるようにゆるく抱きしめられていた。

「れ、れい、」

「やっぱり……少し冷えています」

「え?」

「縁側の床は板張りなので、うたた寝の間に冷えてしまったみたいですね」

「そ、そうかな……?」

「風邪を引いてはいけませんので、しばらく大人しくしていて下さい」

「う…うん………」

また風邪を引いて怜に心配と迷惑をかけてはいけないと、美寧が神妙な面持ちで頷く。すると後ろから「ふふっ」と笑う声がして、後頭部に柔らかな唇の感触がした。

何となく気恥ずかしくて後ろを振り向けず、視線を庭に向けたまま首元に手を遣った。
指先に触れるデコボコとした小さなもの。八枚のダイアモンドの花びらで出来た花の横に、小さなエメラルドが二つ。それはあの日、怜が美寧に買ってくれたネックレスだ。

『このネックレスを毎日着けてくれるなら、教えてもいいですよ』

このネックレスを買う時、怜は美寧の誕生石を知っていた。
それが“エメラルド”だと知っているということは、美寧の誕生日が五月だと知っているということ。
怜と誕生日の話をしたことは無く、どうして彼がそれを知っているのかに気を取られ、『俺があげたものをあなたに身に着けていて欲しい』という言葉に流されるまま頷いてしまった。
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