耽溺愛2-クールな准教授と暮らしていますー
怜が美寧の誕生日を知っている理由は、あの日家に帰る道すがらちゃんと教えて貰った。

答えは簡単。涼香だ。

最初の問診の時、主治医である彼女に生年月日を訊ねられ、美寧はそれに答えた。
怜の家に来て一週間くらいの時のことで、アレルギーや既往歴もその時一緒に訊ねられたこともあり、美寧本人も言われるまですっかり忘れてしまっていた。

それを美寧に説明してくれた怜。だから美寧も怜との約束を守って、寝る時とお風呂に入る時以外は買ってもらったネックレスをずっと着けている。
本当は約束なんてなくても、ずっと身に着けていたいほど気に入っているのだ。


「気に入ってもらえて嬉しいです」

後ろから聞こえた言葉に、思わず振り返った。
どうして怜はいつも自分が考えていることが分かるのだろう。それとも自分でも気付かないうちに喋ってしまっているのだろうか。

丸くした目をパチパチと(しばた)かせる美寧に、怜は切れ長の目を細め微笑む。

「いつも着けてくれてありがとうございます」

「や、ちがうよ?『ありがとう』は私の方だよ。こんな素敵なネックレスをくれてありがとう。ほんとにすごく気に入ってるんだよ?」

真剣な顔つきで一生懸命言う美寧に、怜の顔がほころぶ。近頃彼の顔つきは、出会った頃よりずいぶん柔らかい。

美寧は最初から彼が優しい人だということを分かっていた。
けれど、あまり大きく動くことのない表情と切れ長の瞳は彼をクールに見せていて、どこか人を寄せ付けない雰囲気があった。

美寧と暮らし始めて数か月経った今。彼の表情はずいぶんと柔らかくなり、最近では大学でも『藤波准教授の雰囲気がちょっと変わった』と影で話題になっている。そのせいで以前にも増して女性たちの視線を集めているのだが、怜本人はそんなことは気にも留めていない。


(『自分の我がまま』だなんて、もう言って欲しくないな……)

美寧はそう思いながら、自分が本当にこの贈り物を気に入っているのだと伝えたくて怜をじっと見つめ続けた。すると、振り仰ぐ形で見上げていた美寧の唇に、一瞬すばやく柔らかなものが触れて離れた。
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