耽溺愛2-クールな准教授と暮らしていますー
「起きてたなら教えてくれたら良かったのに……」

眠っている怜にこっそりやっていたことがバレていたなんて、恥ずかしすぎる。

目だけ持ち上げて恨めしげに見つめる美寧に、怜が「すみません」と謝るが、その顔には喜びが滲み出ていた。

「あなたの可愛いすぎるいたずらに、どうしたものかと悩んでいました」

「い、……いたずらじゃないもん。練習だもん………」

「練習?……ああ、“恋人の”」

「うん……」

美寧は思う。
“恋人練習”をするというなら、きっと自分の方だろう。

杏奈が教えてくれた“恋人同士のあれこれ”を、今は何となく想像出来るようになった。
学校で習った“夫婦のあれこれ”を恋人同士でするとは全然知らなかった。

キスには少し慣れてきたけれど、それ以外のことはまだ未知の世界。
もしかしたら、分からないことだらけの自分のせいで、怜が困っているのかもしれない。
だとしたら、もう少し自分が努力しなければ、と思ったのだ。


「れいちゃん『悩んでた』って……私また、困らせちゃった?」

ついさっき怜が言った言葉が、美寧は気になって仕方なかった。
自分が思い付きでやったことで、怜を悩ませたり困らせたりしたくない。

「私、分からないことばっかりで……なるべくれいちゃんを困らせないようにしたいのに……」

「ミネ………」

美寧の背中に回る腕にゆるく力が込められる。

「———あなたはそのままで大丈夫」

「でも……」

「さっき俺が言ったのは、悩みは悩みでも嬉しい悩み。あなたがあんまり可愛いことをしてくれるから、どうしようかと思っただけ」

「うれしい…なやみ?」

「はい」

「あなたからのキスはいつでも嬉しいのです……ただ、あまり嬉しすぎるのも問題だな、と」

「もんだい……?」

「……この状況もありますしね」

「じょう……きょう?」

美寧はきょとんと小首を(かし)げる。
少し考えてから、「そうだった……」と思いついた。

「ごめんなさい。朝は忙しいから、練習してる場合じゃなかったよね」

早く起きなきゃ、と言いかけたところで、怜にぎゅっと抱きしめられた。

「時間はまだ大丈夫」

「……そうなの?」

「はい。だからもう少しだけこのままで———」

布団と怜の両方の温もりに包まれるという贅沢な誘いに、美寧はコクンと首を前に倒す。

「“練習”は焦らずゆっくり。俺たちのペースで行けばいいのです」

「……うん」

「それと———」

そこで言葉を切った怜。続きを待ってみたものの、中々聞こえてこない。
「それと、なに?」と言おうと、顔を上げたその時———

「俺も大好きですよ———ma minette」

嬉しそうにそう言った怜の唇が、美寧のものに重なった。



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