耽溺愛2-クールな准教授と暮らしていますー
怜は思いつく限りの場所を探し回った。

家の周り、公園、商店街———

美寧のお気に入りの場所で、二人が出会った場所である公園を隈なく走りまわる。

もしかしたら、と思い、彼女が倒れていた場所にも行ってみたが、そこには冬に備えてすべての葉を落とした紫陽花の木が寒々しく並んでいるだけだった。

耳に当てたスマホからはやっぱり無機質な声しかせず、一旦下ろして名前を呼びながら隈なく公園を巡る。

蕭々(しょうしょう)と降る冷たい雨に濡れるのも厭わず、傘も差さずに美寧を呼びながら探し回っていると、向こう側から傘を差した人影がやってきた。

「おいっ———」

「———マスター」

怜を見たマスターが目を見張る。

「おまえ……こんな寒い中、そんなに濡れて………」

「ミネは……ミネはそちらに行ってませんか……?」

マスターが左右に首を振る。
家を出てくる直前に、ラプワールに電話をした。美寧がもしかしてそちらに行っていないかと。
するとマスターは血相を変え『何かあったのか!?』と怜に訊ねた。
美寧がまだ帰っていないこと、連絡が取れないことを説明すると、マスターは美寧がいつも通りの時間にバイトを上がり、それ以降は来ていないということを教えてくれた。


「わざわざすみません……」

ラプワール(みせ)を早閉めして来てくれたことを謝ると、「おまえのためじゃない。俺が美寧のことが心配なんだ」と返ってきた。

「万が一美寧が来た時の為に、店には奥さんに居てもらってる。そっちは?」

「こちらも、裏のおたくの奥さんに頼んできました。美寧が帰ってきたら教えて欲しい、と」

「そうか———」

「はい」

二人はそこから手分けして商店街や公園だけでなく、駅の向こう側も探すことにした。

そうしてしばらく経った頃、怜のスマホに着信が入った。


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