耽溺愛2-クールな准教授と暮らしていますー
「ユズキ!」
「家に行ったらこっちにいるって聞いたから」
入ってきたのは久住涼香だった。
怜は彼女にも連絡をしていた。もしかしたら美寧は涼香を頼って行くかもしれない。それだけでなく、この寒空の下で美寧が具合を悪くしている可能性も考えたのだ。
怜の家を尋ねて来た涼香に彼の所在を教えたのは花江だろう。少し前に花江の携帯にメールを送っておいた。
「私ひとりじゃないわ」
そう言うと「入りなさいよ」と涼香がドアの向こうに向かって言う。
涼香の後ろから入ってきたのは、颯介だった。
「どうして、彼が………」
「フジ君の家の前をウロウロしてたの。あやしいヤツかと思ったら、ここのバイトくんだったから連れてきたんだけど………」
涼香がそう言う間にも颯介は俯いたまま。顔を上げるどころか、こちらを見ようとしない。
その顔は青ざめている。
「神谷君……何かうちに用事でも?」
「………」
「ミネに用事なら、彼女は居ません」
「っ、……じゃあ、やっぱりあっちに………」
それまで下を向いて黙っていた颯介が、急に顔を上げた。下唇が赤く腫れている。良く見ると端が切れているようだ。
「神谷君。『あっち』とは?———君はミネがどこにいるのか知っているのですか?」
「先生の家じゃなければ『当麻』の家に帰ったのかと思っただけです………美寧ちゃんが今どこにいるか知りません。知ってたら僕だってこっちに来なかった………」
「君はどうして、彼女の家が『当麻』だと知って……」
怜の疑問に、颯介はすぐに答えた。
実は自分が美寧の許婚であること。そして、自分が彼女の父親である当麻社長にその居場所を教えたということも。
「………本当だったら、僕の方が先に出会うはずだったんだ………そしたら彼女はあなたと会うことはなかった!」
颯介は真っ直ぐに怜を睨みながらそう言った。
「だからって、あなた……美寧ちゃんの気持ちを無視して告げ口するなんて、卑怯だわ!」
涼香の言葉に、颯介が唇を噛み締める。それからすぐに顔を歪ませた。腫れた唇を噛んだのが痛かったのだろう。
「…………分かってます、僕だって………そんなことをしても彼女の気持ちは手に入らないってこと……だから、謝ろうと思って……」
さっきまで怜を睨んでいた颯介だったけれど、今度は肩を落として項垂れた。
「家に行ったらこっちにいるって聞いたから」
入ってきたのは久住涼香だった。
怜は彼女にも連絡をしていた。もしかしたら美寧は涼香を頼って行くかもしれない。それだけでなく、この寒空の下で美寧が具合を悪くしている可能性も考えたのだ。
怜の家を尋ねて来た涼香に彼の所在を教えたのは花江だろう。少し前に花江の携帯にメールを送っておいた。
「私ひとりじゃないわ」
そう言うと「入りなさいよ」と涼香がドアの向こうに向かって言う。
涼香の後ろから入ってきたのは、颯介だった。
「どうして、彼が………」
「フジ君の家の前をウロウロしてたの。あやしいヤツかと思ったら、ここのバイトくんだったから連れてきたんだけど………」
涼香がそう言う間にも颯介は俯いたまま。顔を上げるどころか、こちらを見ようとしない。
その顔は青ざめている。
「神谷君……何かうちに用事でも?」
「………」
「ミネに用事なら、彼女は居ません」
「っ、……じゃあ、やっぱりあっちに………」
それまで下を向いて黙っていた颯介が、急に顔を上げた。下唇が赤く腫れている。良く見ると端が切れているようだ。
「神谷君。『あっち』とは?———君はミネがどこにいるのか知っているのですか?」
「先生の家じゃなければ『当麻』の家に帰ったのかと思っただけです………美寧ちゃんが今どこにいるか知りません。知ってたら僕だってこっちに来なかった………」
「君はどうして、彼女の家が『当麻』だと知って……」
怜の疑問に、颯介はすぐに答えた。
実は自分が美寧の許婚であること。そして、自分が彼女の父親である当麻社長にその居場所を教えたということも。
「………本当だったら、僕の方が先に出会うはずだったんだ………そしたら彼女はあなたと会うことはなかった!」
颯介は真っ直ぐに怜を睨みながらそう言った。
「だからって、あなた……美寧ちゃんの気持ちを無視して告げ口するなんて、卑怯だわ!」
涼香の言葉に、颯介が唇を噛み締める。それからすぐに顔を歪ませた。腫れた唇を噛んだのが痛かったのだろう。
「…………分かってます、僕だって………そんなことをしても彼女の気持ちは手に入らないってこと……だから、謝ろうと思って……」
さっきまで怜を睨んでいた颯介だったけれど、今度は肩を落として項垂れた。